最近は、いわゆる悪徳商法の被害に遭った方たちに話を聞くと、
「あんなにいい人がそんな悪いことをするはずがない」
と皆さん口を揃えておっしゃいます。
「話を聞いてくれたから」「プレゼントをもらったから」
「いい人」にお金を払っただけで、まさか自分がだまされた
とは思えないというのです。
よくある話だけれど、ちょっとお人好し過ぎるのではないか
と思うかもしれません。
ところで、「返報性の原理」という言葉をご存知でしょうか?
「返報性の原理」とは、人から何か施しをしてもらうと、
お返しをしなければならないという感情を抱く心理法則のことを
指しますが、誰にでも心当たりがあるのではないでしょうか。
![好意には好意を](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=436x10000:format=jpg/path/s60f49f26f48eb5cd/image/idba697f1b9536844/version/1380679517/%E5%A5%BD%E6%84%8F%E3%81%AB%E3%81%AF%E5%A5%BD%E6%84%8F%E3%82%92.jpg)
「返報性の原理」は、誰にでも心当たりがある心理法則ですが、
特に高齢者はその傾向が強く、悪徳業者に利用されてしまう
トラブルが後を絶ちません。
そして、残念ながら、お人好しに限らず、
「堅実で」「義理堅く」「人情深い」「しっかり者」が
だまされやすいようです。
堅実だからお金の話に弱く、
義理堅いからドアを開けてしまい、
人情深いからつい同意してしまう、
しっかり者だから誰にも頼らない。
悪徳業者を「いい人」と信じ込んでいるため、周りの人から
契約について不審な点を指摘されると「そんなはずはない」
と意固地になってしまう。
そうこうしているうちに、本当に心配して見守っている人、
手を差し伸べて助けようとする人までも遠ざけてしまう
かもしれません。
このような消費者問題の相談窓口として国民生活センターがあり、例えばこんなアドバイスがあります。
「巧みな話術……不審を感じたらきっぱり断ること」
「不安な場合は……相談しよう」
確かにその通りです。
しかし、そもそも、巧みな話術だから不審を感じない、
不安を感じない、相談しないのではないかと思うのです。
では、どうすれば消費者トラブルを未然に防げるのでしょうか?
![返報性の原理その1](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=480x10000:format=png/path/s60f49f26f48eb5cd/image/i7e51a4892d5cd62a/version/1380696964/%E8%BF%94%E5%A0%B1%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%91.png)
まず図1が本来の「返報性の原理」です。
悪徳業者「無料プレゼントをどうぞ。」
あなた「ありがとう。お礼に商品を買います。」
相手からの好意に対して、こちらも好意で応えようとしています。
この場合、相手が悪徳業者であれば、消費者トラブル発生です。
![返報性の原理その2](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=480x10000:format=png/path/s60f49f26f48eb5cd/image/i4b996fc32ea04bac/version/1380696971/%E8%BF%94%E5%A0%B1%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%92.png)
次に図2です。
①受け取らない
悪徳業者「無料プレゼントをどうぞ。」
あなた「ありがとう。でも無料プレゼントも商品も
いりません。」
最初から相手からの好意を受け取らない方法です。
しかし、せっかくの好意を無下に断るのも心が痛みます。
その時は、受け取ること自体が応えることだと自分に
言い聞かせるのもいいでしょう。
②返さない
悪徳業者「無料プレゼントをどうぞ。」
あなた「ありがとう。でも商品はいりません。」
相手からの好意を受け取りつつ、何も返さない方法です。
しかし、「返報性の原理」を曲げるのは難しいことです。
また、あまりにドライすぎるのも人間性を疑われるような
気がしてなりません。
![返報性の原理その3](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=480x10000:format=png/path/s60f49f26f48eb5cd/image/iada4d0431b3ccf87/version/1380696978/%E8%BF%94%E5%A0%B1%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%93.png)
そこで、図3です。
③ほかの人に返す
悪徳業者「無料プレゼントをどうぞ。」
あなた「ありがとう。ではほかの人に親切にします。」
相手からの好意を受け取ったら、ほかの人に返す方法です。
これならば、こちらも好意を与えることができ、
「返報性の原理」を曲げることなく、消費者トラブルを防ぐ
ことができる妙案と言えます。
とはいえ、昔から「恩送り」という習慣が日本にはあって、
今さら「妙案」などと大々的に持ち出すまでもないのでした。
もちろん、消費者トラブルに遭ってしまった後でも、
クーリング・オフや、契約の無効・取消、少額訴訟などによる
救済制度はあります。
もっとも、「絶対確実に取り返せる!」なんて、
悪徳商法でもない限り、断言はできませんのであしからず。
【参照】
◆国民生活2013年8月号
「返報性の原理」のほか「だまされる仕組み」を解説しています。
◆エフコープ生活協同組合
簡単な質問で自分がどんな「だまされるタイプ」かがわかります。