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ゾウとコーラと司法書士

僕のお父さんは司法書士。

お父さんはいつもこう言う。

「司法書士はいいぞ。人の役に立つ」

「でもお父さん、クラスの誰も司法書士って知らないよ」

「いいんだ、司法書士は黒子なんだから」

「黒子って?」

「歌舞伎の舞台なんかで黒い服の忍者みたいな人がいるだろう?あれは黒子と言って縁の下の力持ちなんだ」

「ふーん……(へんなの、そんなにすごい人なら何で有名じゃないの?)」

僕は黒子について調べてみた。

こんな人が歩いてたら絶対目立つじゃん。それなのに見えないことになってるって?

嘘じゃないか。

それに黒子は縁の下の力持ちって皆知ってるけど、司法書士が縁の下の力持ちってことは誰も知らない。

不公平だ。

司法書士がすごい人ならもっと知ってもらうべきじゃないのかな。

「お父さん、テレビでCM流したら?」

「ええ?司法書士のCMかい?うーん、どうだろう」

「だってコーラはもう知らない人はいないのに毎日CMを流してるよ」

「そうだね」

「あんな有名な会社だって宣伝してるのに、何もしなかったら負けちゃうよ」

「ははは、コーラに負けるか。じゃあどんなCMだったらいいと思う?」

「『こんにちは!司法書士ですよ!』」

「でもそれじゃ司法書士が何やってるかわからないよね」

「『トーキ?の司法書士ですよ!』」

「それだけ?」

「あっ、そうぞ〜くゆいご〜んさいむ〜にさいば〜ん♪」

『司法書士だゾウ』だね、じゃあそれをCMで流すとどうなる?」

「明るくなる!」

「じゃあその人は悩んでることを司法書士に相談したくなる?」

「う~ん」

「大事な問題を相談するならどんな人に頼みたいかな?」

「それはやっぱりちゃんとした人……かな」

「そう、名前や仕事を知ってもらうだけじゃダメなんだ。ちゃんとした人ってことが伝わらなきゃ」

「そんなの無理だよ」

「できるさ。皆が求めてることは何か、困ってることは何か、しっかり見極めて、世の中の役に立つことをコツコツ続けること」

「地味だなあ」

「地味だけどこれが一番。それにテレビがない人にはいくらCMを流しても気づいてもらえないだろう?」

「そっか……」

「いいかい?司法書士をもっと知ってもらうべきってのはそのとおりだよ。でも知ってもらうには工夫が必要なんだ」

「うん」

「それに何もしてないわけじゃない。司法書士を信じてくれる人がちゃんと広めてくれてるんだよ。知る人ぞ知るってやつだ」

「ふーん」

「まあ誰も知らないてことはレアってことじゃないか?」

「なんだかダマされてる気がするなあ」

「ははは」

お父さんはグラスにコーラを注いだ。

僕もお父さんもコーラが大好きだ。

「どうだ、大きくなったら司法書士になりたくなったろう?厳しいぞ」

「別に」

「そんなこと言って本当はなりたいくせに」

「ひみつ!」

僕はコーラを飲み干した。

いつもと違う味がした。


ってCMどうですか?日司連さん!