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オカネの問題はココロの問題

「オカネの問題はココロの問題」

とは言っても、自己啓発によってお金持ちになる方法ではありません。単純に、人間関係がこじれると金銭問題が発生するという話です。

昔から「金の切れ目は縁の切れ目」と言って、親しい間柄でもお金が絡むと人間関係がこじれるパターンはよくあります。

今回は逆に、ふだん気にならなかったことが仲が悪くなった途端にトラブルになるというパターンです。

わかりやすく三つの具体例を挙げます。

①交際中の相手に対してお金を貸した。別れた後に返してもらうよう請求した。

②同棲中の相手に対してお金を貸した。別れた後に返してもらうよう請求した。

③結婚中の相手に対してお金を貸した。別れた後に返してもらうよう請求した。

いずれも、最初からオカネの問題だったわけではなく、別れというココロの問題をきっかけにオカネの問題が表に出てきたケースです。

さて、3つのうち、「客観的に見て」最もお金を返してもらいやすいのはどれでしょう?

正解は、①です。

貸した方にしてみれば、①よりも②③の方が付き合いも長く深いのになぜなんだと思われるかもしれません。

ですが、「客観的に見て」より説得的に映るのは①の方なのです。

なぜなら、②③の場合は、貸したとは言っても結局二人の生活費に使ったのではないか、貸したのではなくあげたのではないかと受け取られ、①の場合よりもっともらしいと判断されにくいからです。

もちろん金額や他の証拠によってケースバイケースで結論は異なります。

 

では、相手の歓心を引くために貸した場合はどうでしょう?

付き合ってくれるというのでお金を貸したが、結局付き合ってくれなかったから返してほしいというような場合です。

こちらも「客観的に見て」認められないでしょう。

上記②③の真逆ではありますが、個人間で信頼関係のでき上がっていない相手にお金を貸すのは一般的によくあることとは言えません。やはり、お金を貸したのがもっともらしいとは判断されにくいのです。

そもそも法律の枠組みに当てはめる段階で迷ってしまいそうです。

付き合ってくれたらお金をあげるという点では負担付贈与とも言えますし、一方で、付き合ってくれなかったらお金を返すという点では条件付(または期限付き)金銭消費貸借とも言えます。いずれにせよ、「付き合い」の基準はあいまいなので、いくらこちらが付き合ってないと言っても向こうが付き合ったと言えば返す必要はなくなります。

 

話を戻して「オカネの問題はココロの問題」になってしまう仕組みはこんな感じです。

まず、貸した時は相手のためになるならと納得していたのに、別のことで仲たがいすると貸したことを後悔してしまいます。

ところが、借りた方は無頓着であることが多く、ますます貸した方のストレスの原因になります。いわゆる温度差というやつです。

一度こうなると単純にお金を返してもらえば仲直りできるというものでもありませんよね。

 

そこで、今回は「司法書士的正しい怒り方」をアドバイスします。

先ほどの例で、付き合ってくれるというのでお金を貸したが、結局付き合ってくれなかったから返してほしいというような場合。

表にまとめたものがコチラです。 

ココロの問題 オカネの問題
付き合ってくれない お金を返してくれない 
法律上強制できない 法律上強制できる

目が合うと視線をそらす

距離が近い

さりげないボディタッチ

酔った勢いで電話をかけてくる

恋愛観や好きなタイプを語る

照明が暗いお店に誘う

たわいもないLINEがひんぱんに来る

大げさなリアクション

下の名前を呼び捨てで呼ぶ

いくら貸したのか

返済日はいつか

返済方法は一括か分割か

現金手渡しか振込みか

どうやって資金調達をしたか

どんな事情で貸したのか

一部でも返済はあったのか

借用書はあるのか

見込みはあるのか

※ココロの問題に関してはあくまでも個人的な意見です。

まず、付き合ってくれなかったという点についてはいくら怒っても法律で強制することはできません。

たとえ証拠を集めたとしても「そんなつもりじゃなかった」と一蹴されるのがオチです。

ほろ苦い思い出としてココロの引き出しにしまっておきましょう。

代わりに、お金を貸したという点についてはとことん怒ってかまいません。いくら貸したのか、返済日はいつか、返済方法は一括か分割か、現金手渡しか振込みか、どうやって資金調達をしたか、どんな事情で貸したのか、 一部でも返済はあったのか、借用書はあるのか、見込みはあるのか、等々具体的にはっきりさせるのです。

そこで嫌われたくないからとうやむやにしても、おそらく相手の好感度は1ミリも変わらないでしょう。

ポイントは、ココロの問題とオカネの問題を分けて考えることです。

ここをきっちり分けて、オカネの問題を第三者から見てわかりやすく組み立て直すことができれば、仮に仲たがいの原因が貸した方にあったとしても、少なくともオカネに関しては貸した方が悪いということにはならないでしょう。

 

自分自身が本当だと思っていること、重要だと思っていることが、事情を知らない第三者から「客観的に見て」はたして本当なのか、重要なのかをもう一度よく考えてみてください。 

 

せっかく勇気を出して司法書士相談に来てくださるのであれば、少しでも前に進めるようにしたいですものね。