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Fly Me to the Moon

◆閑静な住宅街

◆現況更地

◆即日引き渡し可

◆眺望陽当たり良好

◆近隣著名人多数

◆坪単価2.5円

◆国際宇宙ステーション徒歩11年

 

月の土地が買えるそうです。

マスコミにも取り上げられているのでご存知の方も多いかも

しれません。

月の土地
月の土地

もちろん、ジョーク商品のひとつとして販売されているもの

であり、本物の不動産屋さんでは取り扱っていません。

販売価格は1口1エーカー=3,000円です。

1エーカーと言えば約1200坪です。

約1200坪と言えば長野県白樺湖のホテルの大露天風呂と

同じくらいの大きさです。

大露天風呂
大露天風呂

そもそも、月の土地を販売しているのはアメリカの民間会社

ですが、最初は、創業者が1980年にサンフランシスコの

行政機関に月の土地の所有権を申し立てたところ、

正式に受理されたことに始まります。

 

その時、創業者が所有権の根拠としたのは1967年に発効した

宇宙条約の条文です。

 

「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用

若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても

国家による取得の対象とはならない」(宇宙条約第2条)

 

創業者は、宇宙条約で国家による所有を禁じたとしても、

個人による所有を禁じたことにはならないという考え方で、

多少論理飛躍のような気もしますが、アメリカ政府も月面に

国旗を立てている手前、個人の所有を認めないわけには

いかなかったのかもしれません。

それにしても、国家による所有が禁じられているのに、

何故個人からの所有権の申し立てに対して行政機関が当否を

判断できるのかが疑問です。

 

とにかく、この月の土地販売は大当たりし、今や世界175か国、

約130万人の月のオーナーがいるということです。

 

因みに、1984年に月協定という国際法も発効しましたが、

締約国が少ないため宇宙条約の影に隠れてしまっています。

 

「月の表面又は地下若しくはこれらの一部又は本来の場所

にある天然資源は、いかなる国家、政府間国際機関、

非政府間国際機関、国家機関又は非政府団体若しくは

自然人の所有にも帰属しない」(月協定第11条)

 

ところで、宇宙条約をもとにすれば、わざわざこの会社を

通さなくても所有権を主張すれば月面を個人所有にできて

しまうのではないか?

むしろ、自ら不動産会社を設立し、月の土地を売れば、

1人につき1エーカーずつ販売したとして、

130万人×3,000円=39億円の売り上げから、

経費、税金を差し引いたとしても大儲けできるのではないか?

いや、その決済すべてに立ち会ったら、まさに

天文学的数字の報酬を得られるのではないか?

 

危うくもう少しで司法書士としてどこかへ飛躍してしまう

ところでしたが、現時点で地球(日本)の不動産取引と

比較して相違点を挙げてみることにします。

  地球 
所在地番 登記される 登録されない
区画の指定 できる できない
共有 できる できない
権利放棄後の帰属 販売元
抵当権の設定 できる できない
海外在住者 購入可 購入不可
固定資産税 かかる かからない
住所変更時の権利証 提出しない 提出する
権利証の再発行 できない できる
現地調査 できる できない
同時履行の抗弁権 あり なし
本人確認 する しない
司法書士の立会い あり なし

以上より、月の土地の売買は地球(日本)の土地の売買に

比べてすこぶる低価格で無限の可能性を秘めているものの

自由度が低く取引の安全を欠くと言えます。

 

やはり夢を買うようなものだと割り切って購入するか、

簡単に買える夢なんて夢じゃないと抗って購入しないとするか、

月の土地の売買は人としての成熟度の尺度にもなりそうです。